新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
ある時、彼は「私と結婚するのは、異性に慣れるための練習と思ってはどうでしょうか」と、提案した。
彼を練習台だなんて恐れ多い。
けれど、彼は重ねて言った。
「私は一度結婚しておけば、事足ります。一度経験すれば、周りもうるさく言わないでしょう」
まるで、離婚を視野に入れているような話ぶり。
最初から離婚を前提に結婚するのはおかしな話だけれど、これには少し気が楽になった。
彼にも私との結婚にメリットがあり、万が一ダメになった場合でも、それでいいと言われた気がした。
そんな彼だからこそ、結婚しても大丈夫だと思えた。
彼と夫婦になっていこう。そう決意した。
それなのに、覚悟が足りなかったのかもしれない。
『愛し合いましょう』と抱き寄せた彼の腕の中、あまりに緊張している私に彼は苦笑した。
「性急過ぎましたね」
回した手はトントントンと優しくあやすように置かれ、スッと息が吸えるような気がした。
彼の優しさに触れ、知らぬ間に寝た上に、キャパオーバーして発熱。
情けない。
自分はしっかり者だと自負していたのに。