新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「部屋に、戻りましょうか」

「大丈夫です」

「まだ病み上がりです」

「……はい」

 戻りながら彼はポツリと呟いた。

「羨ましかった」

「なにが、です?」

「先ほどのご夫婦です。いや、緊急で運ばれたのに不謹慎ですね……」

 言葉を選ぶように、彼の口調が重くなる。

「あの、羨ましいとは、なにに、ですか」

 彼の側にいて、彼の優しさに触れ、些細なことでもいいから彼を知りたいと思った。

 だから小さな話題のかけらでもいい。
 彼が感じた『なにか』を知りたかった。

 彼は私の熱意に負け、思いを打ち明けた。

「体調が悪そうなご主人を心配して思いやる姿、でしょうか。普段は仲睦まじいのだろうな、とか色々と想像して……」

「私も、私も省吾さんとそういう関係になっていければ、と……あ、いえ、すみません」

 寂しそうな横顔を見ていられなくて、思わず口をついて出た言葉。

「どうして謝るのですか。すごく、嬉しいです」

 省吾さんは私の腰に手を回して、自分の方へ抱き寄せた。

「わっ、あの……」

「とても愛おしいです」

 ストレートな愛情表現に、ギュッと胸の奥がつかまれる。


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