新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 始まりは、気持ちのない結婚だった。
 けれど、今からお互いを思い合っていけたら。
 そんな気持ちが言葉になる。

「あの、このままで聞いてください。私も省吾さんと仲睦まじい夫婦になりたいです。だから、私が緊張していても戸惑っていても……その、昨晩みたいにやめたりしないでください」

「結愛さん……」

「私も、それなりに覚悟をしてます。大丈夫です。それに、早く、私も省吾さんと夫婦になりたい、です」

 つかえつつも思いを伝えると控えめな声色で質問をされた。

「では……キスを、しても?」

 私が彼の腕の中で小さく頷くと、彼は私の体に回していた腕を解いた。
 両手で包み込むように頬に触れ、顔を持ち上げられる。

 悩ましい眼差しと目が合って、胸が鼓動を速めた。
 ゆっくりと整った顔立ちが私を見つめたまま、近づいて柔らかく唇と唇が触れた。

 一瞬、なにもかもが止まって、心臓も止まってしまったと思えるような長い一瞬ののち、唇が離されて、彼の胸に抱きとめられた。

 ワァーッと再び、凄まじい勢いで鼓動が鳴り響いて体が熱い。

 結婚式の誓いのキスでも、顔を上げられなかった私に、省吾さんはおでこに優しくキスをしてくれた。

 付き合っている時にいい雰囲気になっても、固まる私に彼は抱き寄せるだけでいてくれた。

 夫婦になって初めて、人生でも初めてのキスだった。

「必ず幸せにします」

 彼の体にしがみつき、再び小さく頷いた。


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