新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 職場に行くと、今日は重要な仕事が待っている。
 本日から行われる健康診断を、どこの部署の社員が受けるのかは総務部から連絡をしている。

 その名簿を産業医の先生にお渡しする役目を任されているのだ。

 今まで、健康診断のお知らせを作る仕事はしていた。
 そのあとはノータッチだったのだが、五十嵐先生のあまりの人気ぶりに彼の担当にと、私に白羽の矢が立った。

 それは夫婦だから、ではない。

 私たちが夫婦と知っているのは、珠紀と人事部の部長だけ。
 公にすれば混乱するだろうから、という私の意見に、人事部長も賛同してくれて「ぜひ、そうしてほしい」と要望された。

 総務部の部長が私を選んだのは、別の理由。

 五十嵐先生が来訪されるようになってから、総務部の中で唯一、騒いでいない社員だったから。

 男性社員でさえ話題にしていて、男女問わず私が一番興味がなさそうと判断された。

 さすが部長。よく見ている。
 五十嵐先生が来るようになった頃は、ただ産業医の先生が新しくいらっしゃるのだと、その程度の興味しかなかった。

 それが今は……。

 紹介を受ける相手が彼だと知ってからは、ますます視界に入れないようにしていたのもあって、すっかり『五十嵐先生の担当は栗原さん』と認知されている。


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