新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
過不足 省吾 side
昨晩と同様、眠ろうかと声をかけ、部屋の前まで一緒に歩く。
ドアの前で立ち止まり、迷いつつも思い切って彼女に提案してみた。
「おやみなさいのキスをしても?」
「え……」
面食らい、戸惑っている彼女の表情が胸に刺さる。
「いってらっしゃいは当分、無理そうですので、おやすみの時にしませんか? 無理そうなら諦めます」
諦めます。などど、つい本音を漏らした。
言葉の端には気付かれず、彼女はなにかを考えているのか、返事がない。
近づいたと思っていた距離は、そうでもなかったのかもしれない。
彼女とは一歩進んでも、次に会うと三歩後退すると思っておいた方がいいと、今までの経験で学んでいたのに。
彼女に近づけたと浮かれていた分、気持ちは沈む。