新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
その予想に反して、彼女はなにかを思い詰めたように力強く私を見上げた。
「私は、省吾さんと夫婦になりたいんです」
「え、ええ」
突然の宣言に面食らっていると、私のシャツの襟元に手を伸ばし、ぐっと引き寄せられた。
よろめきそうになり、慌てて踏ん張ると彼女から不満げな声を聞いた。
「私から、したかったのに、キス」
思わぬ言葉に力が抜け、壁に背を預けてズルズルとしゃがみ込んだ。
手を額に当て、熱くなる顔を覆う。
「どうして、と聞いても?」
「どうしても、です」
覆っている手を取り払われ、固い決意をした瞳に見据えられた。
しゃがみ込んでいる私に、彼女は被さるように体を屈める。
胸ぐらをつかむように引き寄せられ、触れるというよりも、唇が当たり、勢い余って歯がカツンと当たった。
「……下手くそ」
ぼやいて、彼女の後頭部に手を添える。
引き寄せて、彼女の唇に自分のそれを重ねた。