新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 眠る前、キスをした。
 おやすみのキスを、と言ったのに、どうしてかしないまま部屋に行こうとする省吾さんに、衝動的に行動した。

 自分からキスがしたい、と。

 そこから……思い返して顔が急激に熱くなった。

 キス、にあんなに、官能的で、卑猥で、淫靡な……。
 自分の中に思い浮かぶ言葉の羅列におののいて、頭を振るう。

 違う。ものすごくいやらしかったけれど、嫌ではなかった。
 それどころか……。

「どうせ話せないのなら、もう一度キスをしましょうか」

 思わぬ提案に目を丸くして、それからおずおずと頷いた。
 すると、プハッと省吾さんが吹き出した。

「どうしました? 昨日から様子がおかしいです。オジサンを弄ぶにしては悪質過ぎます」

 弄んでいるわけではない。
 どうにか訴えたいのに、この状況では首を上下か左右に振るか、『大丈夫』のサインだけ。

 苦肉の策で、首を左右に振る。


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