新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
次に目が覚めるとカーテンからまぶしい日差しが差し込んでいた。
隣には誰もいない。
急いでリビングの方へ向かうと、省吾さんが新聞を広げていた。
「おはようございます。そろそろ起きた方がいいですよ、と声をかけようと思っていました」
柔らかな笑顔にホッと息をつき、不平を口にする。
「隣にいらっしゃらないので、書斎で寝られたのかと……」
「声。戻っていますね。残念。話せないのをいいことに、あわよくばおはようのキスもと思っていたのですけれど」
茶目っ気たっぷりに言われ、頬をむくれさせる。
「なんだか省吾さん、昨日から意地悪です」
「そうですか?」
心外だと言わんばかりの声に、ますます不満を募らせる。
「そうですよ。私を名前でも呼んでくださらないですし」
「え……」
意表を突かれたような顔をした省吾さんに、言葉を重ねる。
「無意識、ですか?」
「ええ。そうみたいですね」
口ごもる省吾さんが新聞を横に置き、真面目な顔で私に向き合った。