新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「あの、少しオブラートに包んでほしいです」
「オブラート。懐かしいですね。子どもの頃、薬を飲むのが下手で、母がオブラートに包んでくれました。それなのに、オブラートを上顎に引っ付けてしまって……」
懐かしむように、目を細めていた省吾さんの目が怪しく弧を描く。
「小椋さんに文句が言えなくなってしまうな」
口元にこぶしを当て、苦笑する省吾さんへ聞き返す。
「なにがです?」
省吾さんは当てていたこぶしで口元を覆い、とんでもない発言をした。
「上顎に張り付いたオブラートを思い出して、無性に結愛さんとキスがしたくなった」
「へ」
間抜けな声が出ると、顔を背け、目だけこちらに寄越して省吾さんは続けた。
「上顎に舌を這わせたいって……」
それだけで昨日の彼の息遣いに、彼の唇の感触、それに、彼の……。
鮮明に思い出しそうになって、慌てて頭から追い出すように声を上げる。
「うわ、省吾さん、朝ですよ。清々しい朝になにを言っているんですか」
「ええ。自分がこんなにエロジジイとは知りませんでした」
涼しい顔をして、飄々と言ってのける省吾さんに憤慨する。
「話せなくなります。困ります。その件に関しての話題はおしまいです」
「そうですか。しかし、話題にするのは平気そうですよ」
にっこりと微笑まれ、呆気にとられる。
「もしかして、大丈夫かどうか試すために?」
「さぁどうでしょう」