新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 なにもこのタイミングで行かなくたって。
 その思いがため息になる。

「どうしたの?」

 省吾さんに覗き込まれてハッとする。
 いつの間にか、省吾さんが帰ってきていた。

 頭を左右に振り、顔を俯かせると、省吾さんは私の隣に座った。
 ソファで二人。

 いつもは、少し距離を置いて隣り合って座る。
 それが、今は私のすぐ隣、触れる距離に彼は腰を下ろした。

 そのまま、腕を体に回し、抱きすくめられる。
 すっぽりと彼のぬくもりに包まれ、どうしてか鼻がツンとして、涙が溢れそうになる。

「敵わないなぁ。お母さんに会えないのが、そんなに寂しい?」

「え」

 ズズッと鼻をすすると笑われて、ティッシュで鼻を拭かれた。

「まるで小さな子みたいだね。少し妬けちゃうけど」

 まぶたにそっとキスをして、それから唇にもキスをしようとして、顔を離した。


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