新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
私だっていい大人だ。
母から今後の人生を謳歌したいと言われれば、笑顔で応援して送り出したい。
母が旅行に行くのが、嫌なわけじゃない。
自分がおぼつかない生活の中、一人放り出された気分になって不安なだけ。
それは多分、省吾さんの言う通り、彼と微妙な関係だからだ。
きっと母は私に、彼から逃げ出さずに向き合なさいと言いたいのだと思う。
「どうしたの。キスしていないのに話せなくなった?」
顔を覗き込む省吾さんの視線から、逃れるように顔を背ける。
流れる髪を、彼が私の耳にそっとかけた。
向き合わなければと思うけれど、目まぐるしく浮かぶ思いは口に出せない。
「食事は? いいのならもう寝よう。なにもかも忘れて眠るのがいいのかもしれない。今日は一緒に眠ろう」
頷いてみせると、省吾さんはそっと唇にキスをした。
「やっぱり堪え性がないみたいだ」
そう言って笑う彼に抱きついて、胸元に顔を擦りつけた。
キスをして、言葉を奪ってくれた。
今はそれが嬉しかった。