新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 アオシマコーポレーションに出勤する途中。
 人事部の白石さんと顔を合わせた。

 今は人事部ではなく、直接医務室に向かうため、人事部の人との関りは皆無に等しい。
 白石さんとも久しぶりだった。

 結愛さんとの出勤時間をズラすため、他の社員よりも早く出社している。
 周りに人はまばらだ。

「どうして結愛に近づいたんですか」

 単刀直入に聞かれ、苦笑する。

「私は、目の敵にされています?」

 彼女は私と結愛さんとの結婚を知る、数少ない人物だ。
 結愛さん自身も彼女を信頼しているようで、私も白石さんならと、事情を話してある。

「結愛には幸せになってほしいので」

「私では力不足ですか」

「不足というか、少なくとも結愛を幸せにするのは、五十嵐先生のような人ではないです」

「非常に難解な問題ですね」

「五十嵐先生!」

 煙に巻こうとしたのを察した白石さんが、珍しく声を荒げた。
 そのせいで注目を浴びてしまい、この話は続けられなくなった。

 それでも白石さんは、非難する口調を緩めない。

「泣かせたら許しません」

 周りの人が聞いていても、五十嵐先生のことだから言いたくなるのもわかる、と思われそうで舌を巻く。

「もちろん、そのつもりです」

 会釈して彼女に敬意を払うと、彼女はフンッと顔を背けて行ってしまった。



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