新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
店内に入り、席に案内されると、一人の人物に声を掛けられた。
「五十嵐先生。お久しぶりです。そちらは……」
声を掛けてきた人物に顔を向けると、そこには神田悠真(かんだゆうま)が立っていた。
研修医時代に一緒になった医師で、今は確か大学病院で外科医をしている。
「妻の結愛です。こちらは神田先生」
彼女にも神田先生を紹介すると「初めまして、くり……五十嵐結愛です」と戸惑いながらも頭を下げた。
「ご結婚されたとは、初耳です」
「ええ、ごく内輪で式を挙げたので」
「そうですか。では、また病院で」
知り合いの医師に会うのは、想定外だった。
彼女を医師仲間には、あまり会わせたくなかった。
神田先生がいるのなら、他にも医師がいるかもしれない。
来て早々だが、今からでも別の店に変えたくなった。
けれど彼女は変に思うだろう。
「どうされました?」
さっそく彼女が異変に気づき、首を傾げている。
「いえ、料理を取りに行きましょうか」
彼女の視線から逃れるように、料理が並んでいる場所へ向かった。