新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「あなたとは結婚したのね。彼」
突然近くに立っていた女性に言われ、驚いていると、彼女は目も合わせずに去っていく。
目が覚めるような赤いワンピースを身につけた女性は、私とは住む世界が違いそうな華やかさを持っていた。
私に話しかけたわけじゃないのかな……。
去り行く背中をぼんやりと眺めていると、先ほど挨拶を交わした神田先生が私の方へ歩み寄って告げる。
「彼女、五十嵐先生の昔の恋人だから。自分は結婚まで至らなかったのにって思ったんでしょうね」
「昔の、恋人……」
「ええ。美男美女の医師カップルでお似合いでしたよ」
神田先生の言い方に棘を感じて、軽く会釈をし、私もその場から立ち去った。
当初の目的である、お手洗いに向かう。