新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「結愛さん? どうされました?」

 声を掛けられ、肩を揺らす。

 声を聞くだけで切なくなるのに、今、一番顔を見たくない人。

 しばらく立ち尽くしていたのだと思う。
 戻ってくるのが遅かったせいか、省吾さんが心配そうな顔をして迎えに来た。

 今、省吾さんに、どんな顔をすればいいのか分からない。

 力なく数度首を左右に振ると、彼は異変を感じ取ったのか「帰りましょう」とだけ言って私の手を引いた。

 あんなに楽しみだった、省吾さんとの食事。
 帰りはお互い無言で帰宅した。

 玄関に入ると、省吾さんは掠れた声で質問をした。

 体の奥から絞り出したような声。
 その声を聞いただけで、涙が出てしまいそうになる。

「神田先生、に、なにか言われた?」

 私は首を左右に振る。
 堪え切れない涙が頬を伝う。

「それなら、どうして泣いているの」

 それでも頑なに首を横に振った。

 そして涙と共に、今まで感じていた疑問がこぼれた。


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