新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「ベッド」

「え」

「寝室のベッドがダブルベッドなのは、恋人と一緒に寝ていたからですか」

「……は?」

 苛立ちが声のトーンで伝わる。

 穏やかで優しくて、たまに意地悪な発言をする時もあるけれど、動じない人だと思っていたのに。

 彼はなにかを察知したのか、勝手に話し始めた。

「激務で、だから結婚は嫌だった。大切な人などいらないと……」

 私は大切な人じゃないから、結婚できたと、そう言いたいの?
 頭を鈍器で殴られたような衝撃を受け、涙が止めどなく溢れ出る。

「だから、その場限りで良かった」

「その場、限り……」

 私の中の省吾さんのイメージからかけ離れた考え方は、到底受け入れられそうにない。
 けれど省吾さんは言い訳も、取り繕いもしない。

「軽蔑したらいい」

 こんなの彼じゃない。
 彼はもっと優しいと、勝手にそう思っていただけだというの?

 しばらく沈黙が流れた後、彼は「すまない」と呟くと、その場から離れていく。
 一瞬見えたのは、傷ついたような悲痛な表情。

 どうして、彼の方が傷ついた顔をしているの?

 そう思うのに、彼の悲痛な表情が頭から離れずに、胸を痛くさせる。
 電気を付ける気力も起こらず、ソファにうずくまった。

 廊下から差し込む玄関の照明が、薄っすらと部屋を照らしていた。

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