新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「分かりました。私からもお願いがあります。今夜から、寝室のベッドは省吾さんが使ってください。私は、ここのソファで寝てはダメですか」
「それは、でも」
口ごもる彼のシルエットだけでも、胸が痛くて話を切り上げる。
「お願いします。そしたら私も今日のことは忘れます」
はっきりとは見えない彼を、真っ直ぐに見つめて言うと、彼は仕方なくといった様子で「わかりました」と頷いた。
忘れられるわけがない。
けれど、私もどうにも身動きが取れなかった。
元彼女の登場と、結婚するまでの彼の素行を知ったショックは、皮肉にも自分の気持ちに気付くキッカケとなった。
そして気付くと同時に失恋だった。
結婚を先にしているのに……いや、結婚は正確にはしていない。
それは、やっぱり省吾さんも元彼女に未練があるからだろうか。
いつの日か、あのモデルのような美しい彼女とやり直す時が来る、そんな日を夢見て。