新婚蜜愛～一途な外科医とお見合い結婚いたします～

　そんな思考に陥るのには、わけがある。

　結婚を決める前、「お医者様だからおモテになるでしょう」と言った、何度目かの時に彼はこう言った。

「医師がいいと言う人は、産業医になろうとしている者には目もくれないですよ。外科のような分かりやすく派手な科で、その上、親が開業医をしている将来有望な……」

「省吾さんだって、お父様の病院があるじゃないですか」

　内科医より外科医がモテるのか、そして産業医は論外なのか、それらのなにが正しいかどうかは別にして、省吾さんのお父様は開業医だ。

「父の病院は、弟が引き継ぐ予定です。私に、期待をしていたのならすみません」

　省吾さんを見ると寂しそうな顔をしていて、胸が痛くなった。

　どうして産業医を志したのか、その過程は知らない。
　もしかして、産業医になる過程で、離れていった女性がいたのかもしれない。

　だから、つい、私は「産業医をされる省吾さんは素敵だと思います」と言っていた。

　その言葉に嘘はなかったし、寂しそうな彼をどうにか元気付けたかった。

「それならば、私と結婚してくださいますよね」そう彼から続けられた時は驚いた。

　今思えば、産業医に賛同する私がたまたま都合が良かっただけなのかもしれない。