新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

過去と平穏 省吾side

 結愛さんに、あんな風に当たって最低だ。
 ただ昔の女関係を指摘されただけで。

 彼女には知られたくなかった。
 結愛さんには……。

 純粋無垢な彼女を守らなきゃならないのに、彼女を自分の手で壊してしまいたい衝動に駆られる。

 突き詰めていくと、どうせ心が手に入らないのなら、せめて体だけでも、そんな考えに辿り着く。

 彼女を傷つけ、私をより彼女の中に刻んで……。
 自分の中に、こんなに激しい感情が潜んでいるとは知らなかった。

 攻撃的で、利己的で、激しく彼女を求めている。

 その反面、彼女を失いたくない自分がいた。

 優しくしたいのに、傷つけたくなり、無理にでも手に入れたくて、それなのに失うのが怖い。
 揺れ動く気持ちに折り合いがつけられず、彼女と距離を取るより他なかった。

「そんなこと言わずに一緒に寝よう」とは言い出せなかった。

 いつかは失うと決まっている間柄なのに、今はもがいていたかった。


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