しずくの恋
途端に不自然な沈黙が車内に訪れる。
混んでいるはずの車内で、
倒れたおじいさんの周りに奇妙な空間ができた。
なかには露骨に迷惑そうな顔をする人もいた。
目の前で倒れているおじいさんに、
息が止まりそうになる。
きゅ、救急車‼
そう思って慌ててスマホを手にしたけれど、
走行中の電車から
救急車って呼んでいいものなの?
スマホを指さしている人差し指は、
震えたまま動かない。
それに…
朝からお酒飲んでるようなおじいさんだし…
余計なことをしたらいきなり怒鳴られるかもしれないし、どんな人なのかもわからない。
そう考えたら、怖くて体が動かなかった。
本当のことをいうと、
関わり合いになりたくないって気持ちもあった。
倒れたまま動かなくなってしまったそのおじいさんに近寄る人はいなくて、
車内を包む居心地の悪い沈黙は続いた。
そのときはものすごく長い時間に感じたけれど、きっと数十秒のことだったのだと思う。
そのとき、
「大丈夫ですか?」って人波をかきわけて近づき
倒れたおじいさんに迷わずそう声をかけたのが
流山くんだった。
混んでいるはずの車内で、
倒れたおじいさんの周りに奇妙な空間ができた。
なかには露骨に迷惑そうな顔をする人もいた。
目の前で倒れているおじいさんに、
息が止まりそうになる。
きゅ、救急車‼
そう思って慌ててスマホを手にしたけれど、
走行中の電車から
救急車って呼んでいいものなの?
スマホを指さしている人差し指は、
震えたまま動かない。
それに…
朝からお酒飲んでるようなおじいさんだし…
余計なことをしたらいきなり怒鳴られるかもしれないし、どんな人なのかもわからない。
そう考えたら、怖くて体が動かなかった。
本当のことをいうと、
関わり合いになりたくないって気持ちもあった。
倒れたまま動かなくなってしまったそのおじいさんに近寄る人はいなくて、
車内を包む居心地の悪い沈黙は続いた。
そのときはものすごく長い時間に感じたけれど、きっと数十秒のことだったのだと思う。
そのとき、
「大丈夫ですか?」って人波をかきわけて近づき
倒れたおじいさんに迷わずそう声をかけたのが
流山くんだった。