しずくの恋
いつもこっそり見ているときには
たいてい大人に混じって稽古しているから、

子どもたちを教える新鮮なその姿に目を奪われた。


十字を切って子どもたちに見本を見せている流山くんは、
学校では見せない厳しい目つきで子どもたちを教えている。

そんな流山くんを子供たちがキラキラした瞳で見つめている。


流山くんに教えてもらっている小学生達が羨ましい…


「カッコイイ……」


思わず呟いたそのとき、



「お願いします!!」


ひときわ大きな高い声が道場に響いた。


声の主はそんな大きな声が出せるとは思えない、
とても可愛い顔立ちをした細見の女の子だった。

道場の入り口で深くお辞儀をして
肩につくかつかないかの黒い髪を揺らして、

館長と一言二言かわすと、こちらへ向かって走ってきた。


「お待たせしてごめんなさい!

今日一緒に稽古に参加させていただく吉川りり花です。
高2です。よろしくお願いします!」


はきはきとしたその話し方と明るい笑顔に、
それまでの緊張がほぐれていく。


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