しずくの恋
「いや、桐原さんは性格いいです!
 俺には分かります!」


なぜだか確信的に胸を張ったその後輩に


『いや、正直、性格最悪です』

と、心のなかで呟く。


それに私は優しくなんてない。



だって、体育館裏に呼び出されて、

どんな話になるのかわかるから、本当は行きたくないのに、

呼び出しを断ることもできなければ、

いい返事をすることもできなくて、

結局、相手の人を傷つけることになる。


そんな私は最低だって、思う。


本当に優しいのは、琴ちゃんみたいな子。

琴ちゃんは、口は悪いけど、

本当に困った人を見つけたときには
見て見ぬふりをしたりはしない。


本当に性格がいいのは、杏ちゃんみたいな子。

杏ちゃんが誰かのことを悪く言っているのを
聞いたことがない。

それなのに、どうして私なんだろう…


早く、この場を離れたい。


そう思うほどに
胃の奥のキリキリとした痛みが増していく。

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