しずくの恋
その日のお昼休み、お弁当をカバンから取り出したところで、

隣のクラスの男子に廊下に呼び出された。


「ごめんなさい、今日はちょっと…」


と言いかけると、


そのひとの友人らしき男子数人が、
すこし離れた場所から口を挟んだ。


「話だけでも聞いてやってよ。
そいつなりに勇気だしたんだからさ」


「そうだよ、無視しないでやってよ」


「つうか、いい気なってんじゃね?」



その言葉の数々に逆らうこともできず、
キリっと痛む胃をさすりながら、

話したこともない、隣のクラスの男子についていった。



人のいない非常階段で「付き合ってください」と言われて、


「ごめんなさい」と繰り返した。

< 47 / 73 >

この作品をシェア

pagetop