しずくの恋
申し訳なくて、
意味もなく悲しくて、

相手のひとの顔すらまともに見ることができない。



どうして、好きな人には相手にされなくて、
好きじゃない人が私のことを好きになってくれるんだろう。


私、性格なんて全然よくないのに。


沢山の人に告白されて、
私は好きな人に好きになってもらえる運どころか

名前を憶えてもらえる運すら、
使い果たしちゃったのかもしれない。


本当は優しくもないし、性格もよくないのに、
たくさんの人に「ごめんなさい」って伝えすぎて

罰が当たったのかもしれない。


「本当にごめんなさい」と返事をして、その場を走って逃げ出した。



涙が、こぼれる。



だれかと、つきあっちゃえばよかったのかな?


そうしたら誰のことも、
傷つけないで済んだのかな。


私にはだれかに好きになってもらう資格なんて
ないのに…



すると、走って追いかけてきた、隣のクラスの男子に腕を掴まれた。



「ごめん、泣かせるつもりなんてなかったんだけど。
でも、理由だけでも聞かせてもらえないかな」



息を切らしているそのひとに、顔を上げられないまま答えた。



「ごめんなさい、好きな人がいます」


そう断りながら涙がこぼれた。


私の好きな人にも、好きな人がいます。
そう心のなかで続けた。

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