しずくの恋
「桐原先輩に興味がない男なんているんですね。

少なくともうちの学校にそんな奴いないと思うけど…」


そう答えた後輩くんに苦笑い。



美肌に力を入れても、

少しでも華やかになれるように薄っすらと
お化粧しても、

髪をサラサラにしても彼の目に私は映らない。



「桐原さんに足りないものなんてない気がするけど…」


その言葉になにも返事をすることができずに
ペコリと深く頭を下げて

その場を後にした。



周りからどんな風に見えているのか分からないけれど、

私、性格なんてよくないし、


全然優しくもない。

すごく薄情なところもあるし。


そんなことを考えながら中庭の壁時計を見て
慌てて教室に戻った。


キリキリとした胃の痛みが食欲を奪っていく。
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