しずくの恋
「あのっ!迷惑じゃなかったら
次に会ったときに挨拶、してもいいですか?」


「え?」


「その、振られたのにこんなことお願いして、
図々しくて本当にごめんなさい。

でも、友達として‼︎

もう変なことは言わないので‼︎
困らせるようなことは言わないので‼︎

卒業までの間、あと半年間だけでも、

学校で会ったら『おはようございます』とか
『さようなら』とか挨拶してもいいですか?


そ、それで、『流山くん』って呼んでもいいですか?」



「え、あ、うん」


戸惑いながらも
優しく笑ってくれた流山くんの優しさに、

泣き笑いした。


「ストーカーも、もうやめるので!!!」



そう言って両手を合わせて謝りながら、
流山くんにストーカー卒業を誓った。



すると、流山くんが目を見開いた。



「俺、ストーカーされてたの?」



「あ、ちょっと?…だけ?
でも、これからは気を付けます!」


するとそれを聞いた流山くんが吹き出した。



「……ぶはっ!! 桐原さんって面白いね!」



そんな流山くんに心が緩む。

こんなふうに話してもらえるのなら、
友達という関係も全然悪くない。



「じゃ、俺もストーカーされないように気を付ける!

全然、気づかなかったから!

女子にストーカーされて気づかないなんて、
俺、隙だらけだな」


そう言って流山くんがいつも友達に向ける笑顔で笑ってくれたのが嬉しくてたまらなかった。

気まずいまま終わらなくてよかった。



「あ、そうだ。じゃ、友達の記念に。
もらったチケットなんだけど、これ、一枚いる?

もし空手に興味もってくれたらうれしいから。
それ、古い映画だけど面白いよ」


驚きすぎて息が止まった。


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