しずくの恋
すると、そんな私を見て
流山くんがチケットを握った手を

パッと後ろに引いた。


「ごめん! 空手映画なんて興味ないよな」


苦笑いしながらそう言った流山くんに、
こみ上げる涙をこらえて、

頭がもげるんじゃないかってくらい
強く頭を振った。


縦に振ったらいいのか、横に振ったらいいのかわからなくて、

とにかく、がむしゃらに頭を振った。



「チケット、ほしい! ほしいですっ 」



「そ、そんなに強く頭ふって大丈夫⁈ 」


慌てている流山くんを初めて見た。


そんなことの、ひとつひとつが嬉しくてたまらなかった。


さっき告白して振られたばかりなのに、
本当に馬鹿だと自分でも思う。


でも、流山くんと言葉を交わすごとに、
流山くんのことを好きでよかったと思ってしまう。


「このチケット、も、もらっていいんですか?」


流山くんから受け取ったチケットをじっと見つめる。


「大切にします。家宝にします。額に入れて…」



「いや、チケットだから使っちゃっていいと思う」



笑いながらそう言った流山くんに

何度も頭を下げる。



「流山くん、本当に本当にありがとう」


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