君と巡る歴史
「ありがとうございます」

千夜は微笑み、お店へと入る。オリーブオイルがたくさん売られている。チュニジアは世界有数のオリーブ生産国だ。

お土産を買った後、千夜とトゥルキは街をぶらぶらと歩いた。会話をいつものようにするが、どこかぎこちない。

「あの!」

トゥルキが千夜に小さな紙袋を渡す。その顔はどこか赤い。

「これ、よかったらもらってくれませんか?思い出に……」

千夜が袋を開けると、中には花びらがデザインされたおしゃれなキーホルダーがあった。

「これは……」

「ファティマの手のキーホルダーです」

トゥルキはそう言って、説明してくれた。

ファティマとは、社会奉仕に生涯を捧げたイスラム開祖の娘のこと。救いの手を差し伸べてくれるという願いが込められており、身につけておくと幸せを呼ぶと言われている。

「素敵なキーホルダーをありがとうございます」

にこりと千夜は笑う。どんな高級なプレゼントよりも嬉しい。トゥルキの気持ちがこもっていて、胸が温かくなる。
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