君と巡る歴史
チュニジアについて千夜は調べたが、公用語はアラビア語だ。千夜はアラビア語などわからない。英語しか話せないのだ。

アフリカの行ったことのない国。しかし、お父さんが勧めたということは、男性はお父さんから信頼されているのだろう。

「お客様、コーヒーのお代わりはいかがですか?」

キャビンアテンダントが千夜に話しかける。千夜は「いただきます」と言い、窓の外を見つめた。



「初めまして、千夜さん。私はトゥルキ・ヤニスです。あなたのお父様からお話は伺いました。よろしくお願いします」

空港で千夜を出迎えたのは、黒髪の千夜より十センチは高いであろう身長の整った顔立ちの男性だった。アラビア語ではなく、日本語を話している。

「ア、アッサラーム……」

必死でアラビア語を覚えようと飛行機の中で勉強していた千夜は、流暢な日本語がトゥルキの口から飛び出したことに驚く。

「日本語、どうして……」

驚く千夜にトゥルキは優しく微笑む。
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