君と巡る歴史
「会社を父から受け継いだ時に、千夜さんのお父様と仲良くなったんです。その時に日本語を勉強しました」

トゥルキは千夜の荷物を手にし、言う。千夜はこの自分と歳がそんなに変わらなさそうな男性が社長をしていることに驚いた。

「長旅でお疲れでしょうし、今日はゆっくりできる観光地にしましょう」

「あ、あの!私、自分で荷物くらい……」

慌てる千夜にトゥルキは「いいんですよ」と微笑んだ。

「無理はしないでください。荷物は私が責任を持って預かります」

こうして、千夜の旅が始まった。



チュニジアは北アフリカに位置する国で、地中海とサハラ砂漠に面している。

千夜はトゥルキに連れられ、シディ・ブ・サイドに来た。地中海と建物の真っ白な壁のコントラストが美しい街だ。

「わあ……。きれいですね」

千夜は何度もそう呟く。その言葉しか現れないほど、美しい街だった。

「そう言っていただけると、とても嬉しいです」
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