腹黒王子の初恋
 うっ。朝から濃厚なのを妄想してしまった。しかし、これが限界。これ以上は彼氏ナシ=年齢の私には妄想できません…

 月曜朝。会社。爽やかな秋晴れの天気も私には空しくテンションダダ下がり。まあ、見た目には同じでしょうけど。早くロッカー行ってアノ本の所在を確かめなくては。

 まだ読んでないけどこんな妄想な感じの内容じゃないのかな。結構エロな感じだよね。どうかありますように…!

「梢先輩!おはようございます!」

 肩をポンっと叩かれた。振り向くと笑顔のゆうきゅんが。

「おはようございます。」

 すぐ前を向いて挨拶を返す。

「まってくださいよ。一緒に行きましょう。」

 ゆうきゅんが隣に並ぶ。うっ。やめて。

「今日はあったかくていい天気ですね。」
「…」
「最近朝晩涼しくなってきましたもんね。」
「…」

 朝から爽やかで元気だなあ。ゆうきゅんのさわやかボイス聞いているとドキドキしつつもちょっと憂鬱なのが解消されたかも。

「週末何しました?」
「…」
「僕は本読んでました。」
 
 本?

 あ。オフィスについた。会釈をして別れようとしたら、ゆうきゅんに腕を引っ張られた。

「深夜のオフィスで奥手先輩を調教しちゃいます」

 耳元でささやく。ひっ!思わずゆうきゅんを見る。ばっちり目があった。にこって笑って隣の部屋に入っていた。

 まさか。タイトルじゃん。ひーっ!ゆうきゅんが持ってる!しかも読んだって?

 心なしかさっきの笑顔が黒かったような…どうしたらいいの?

 私はオフィスの入り口で立ち尽くすしかなかった。
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