腹黒王子の初恋
「先輩、先輩、くらげですよ~かわいいですね。」
「わぁ、本当だ」

「おぉ、大きい。かっこいいなあ」
「おぉ」

 水族館内は適度に薄暗くて落ち着く。ゆうきゅんがはしゃぎながら話をしてくれる。一緒に水槽を見ながら話すから直接目を合わせなくて済む。私もこの状況に慣れてきて楽しめるようになってきた。だって、水族館久しぶりなんだもん。



「見て見て、ちんあなご!いっぱい。かわいい。はは」
 
 砂から顔をだしてふよふよ動いている愛らしい姿に自然と笑顔になる。

「…」

 話しかけたのに反応がない。

「ねぇ、文月くん」

 ゆうきゅんの方を向くとあのとろけるような優しい顔で私を見ていた。どきん。一気に胸が激しく動きだした。私が真っ赤になって固まっていると、またゆうきゅんが目をそらした。

 うっ。はー。はー。ゆうきゅんのあの顔は心臓に悪いよ~!
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