腹黒王子の初恋
腹黒王子のヤキモチ
 ふ~今日は寒い。巻いたマフラーで口元を隠した。少しずつ冬になっているのを感じる。駅からの会社までの道。

 前にゆうきゅんを発見。心がほっこりする。

「文月くん。おはよ。」

 肩に手をかけて声をかけた。

「えっ?…ゆめちゃん?…っ!おはようございます。」

 ゆうきゅんが振り向いて真っ赤になって横を向いた。

「え?どうしたの?」
「…初めて先に話しかけてくれた。」
「えっ…」

 その言葉に真っ赤になった。そんなことがそんなに嬉しいって思ってくれたの?胸がぎゅんとした。雰囲気が一気に甘いものになる。

「……」
「……」

 あぅ。沈黙。

 急に意識してきちゃった。何でさっきは何も考えずに挨拶できたのが不思議だ。今はこんなにドキドキしてるのに。ゆうきゅんにも音が聞こえそう。

 何か会話。会話。ないかな…こういうときは天気の話に限る。よし!今日はいつもより寒いね。今日はちょっと寒いね。今日は寒いぜ。あー!どんどんおかしくなる。

「よし!今日も仕事がんばれそう。先輩ありがとう。」
「っ!」

 ゆうきゅんが満面の笑顔を私に向ける。

 これが演技?なの?信じられない。

 天気の話をしようとしていたのに一気にどっかへ飛んで行ってしまった。

 そういえばゆうきゅんと二人きりだ。しかもこんな素敵な笑顔を私に見せてくれる。ヤバい。無理…どうしよう。いよいよ心臓が変な音をしだした。寒いのに変な汗が出てくる。
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