腹黒王子の初恋
 泰晴と食事をして帰り道。すっかり寒くなった真っ暗な道を二人で歩く。

「・・・」

 先ほどの夕食が思い出されて小さくため息が出た。

 いつもよりちょっとおしゃれなイタリアンに連れて行かれなんか疲れた…確かにおいしかったけど。

「・・・ん?」

 視線を感じ泰晴の方を見ると、すっごく甘い顔をして私を見ていた。

「えっ。何?」

 どきっとして思わず聞いてしまった。

「何って何?」
「・・・いや、見すぎじゃない?」
「別にいーだろ。優芽の顔ならどんだけ見ても飽きない」
「・・・っ!」

 泰晴のド甘い発言に一気に顔が赤くなる。

「ちょ・・・ちょっと。変わりすぎなんだけど!甘すぎ!・・・ってか!ずっと手つないでるねっ」
「何?嫌なの?」
「いやってわけじゃ・・・ひっ」

 泰晴が口元につないだ手を持っていき軽くキスをした。

「・・・ずっとこうしたかった。」

 小さな声で囁く。色気駄々洩れの様子にくらくらする。

「・・・」

 今までと違う泰晴の態度にどうしたらいいかわからない。

「今日優芽あんまりしゃべらねぇな。どうした?」
「…いや…別に…泰晴こそいつもと違いすぎて、ついていけない」
「はは。そりゃあね。早く慣れろよ。」

 そう言いながら頭をポンポンされた。

「あ。家着いた。ここまでいいよ。ありがとう。」
「大丈夫部屋の前まで送るよ。」
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