腹黒王子の初恋
「おー、優芽おつかれ。」

 泰晴が手を上に上げ笑顔で言う。ここは会社近くのカフェ。今日も一緒に帰るとか言うからここで待ち合わせることにした。昨日みたいに迎えに来られたら困る。

「ねぇ、泰晴忙しいのに大丈夫?待ってなくていいのに。」
「大丈夫、大丈夫。早く帰ろうぜ。俺、腹ペコなんだけど。」
「え?食べてく?」
「金曜だし優芽ん家で食おう。ゆっくりできるし。スーパー寄ってこ。」

 泰晴が当たり前のように私の手を握りカフェを出た。

「ねぇ、家でゆっくりごはん食べるなら莉子も呼ぶ?」

 二人で駅までの道を歩く。スーパーは私の家の近くに行くつもりだ。

「嫌、いい。」

 泰晴が小さく答える。

「え?莉子もいた方が楽しいじゃん。呼ぼうよ。」
「俺は二人のがいい。」
「・・・・」

 反論を許さない雰囲気で手をぎゅっと強く握られた。

 うっ。気まずい…
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