腹黒王子の初恋
「んじゃ、俺帰るわ。」

 ビールを一缶だけ早々と飲んで泰晴が立ち上がった。

「え?もう帰るの?」

 玄関まで泰晴を送りに行った。

「明日も会社だしな。家でやることもあるし。たまには女同士で楽しめよ。」

そう言って軽くぎゅっと私を抱き締めておでこに唇を落とした。

「おーい!そこいちゃいちゃしてんな!」
「うっせ。じゃ、莉子、俺先帰るから、よろしく。」
「じゃ、優芽おやすみ。」

 私の頬を軽くなでて泰晴は帰って行った。

「よっしゃ、女同士いろいろ語ろうぜ。」

 莉子が自分の隣の床をバシバシ叩く。

「ほら。座って。何か悩みあるんでしょ。泰晴が聞いてあげてくれって。」

 その話を聞いてまた目がうるみだした。泰晴はなんて優しいんだろ。それに電話ひとつですぐ来てくれた莉子。私は本当に幸せだ。
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