腹黒王子の初恋
 あー。今日は冷えるな。ああ、ダルい。駅を出て会社に向かう。多くのうちの社員達が歩く中、前に泰晴が見えた。小走りで駆け寄って、声をかけながら手をつないだ。

「泰晴、おはよ!」
「お?優芽、おはよう...」
「今日は寒いね。明日はクリスマスイブだよ。何するの?」
「おぉ...それより手いいのか?」
「うん。ちょっとだけ。泰晴大好きだなあと思って。」
「おぉ?そうか、そうか」

 泰晴が嬉しそうに手を握り返してくる。

 そう。私は泰晴が大好きなんだ。大丈夫。ゆうきゅんへの思いは一時的なものですぐなくなるはず。

「仕事終わったら一緒に飯食いに行こうぜ。優芽が好きそうなの予約しといたから。週末だったらもっといろいろゆっくりできたけどなぁ。会社員のつらいところだ。」
「ふふっ。そうだね。私が好きそうなのってどんな店?」
「内緒。楽しみにしてて。」
「はーい。仕事がんばろう。泰晴のが忙しいんだから、がんばってよ。」
「はいはい。わかってるよ。」
「じゃ、私は先行くね。」
「お、おー。また連絡するよ。」

 笑顔で手を振って別れる。大丈夫。私は間違ってない。
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