腹黒王子の初恋
「あの、梢先輩。」
ゆうきゅんがわざわざ私のデスクまで来た。平常心。平常心。
「この資料作っていただいたもの5ページ目が全部抜けてるんですが…」
「え?」
嘘...ちょっと前にすっごく大量に作ったやつじゃん。血の気が引いた。
「あっちに資料あるので来て確認してもらえますか。」
「は、はい…わかりました。」
ゆうきゅんの後ろをついて行く。どこに資料があるんだろうかと思っていたら、例の秘密の場所に出た。
びゅっと冷たい木枯らしが吹いて目を閉じた。
ガチャという扉が閉まる音に目を開けるとすぐ前にゆうきゅんの顔が。驚いて目を見開く。扉を背に両腕で囲われていた。いわゆる壁ドン状態。
「えっ...と…資料は」
「そんなの嘘ですよ。」
「ああ。嘘…」
よかった。私のミスじゃなかったんだ。ほっとしたのも束の間。ゆうきゅんが顔を耳元に近づけた。
「先輩、さっき僕が話しかけて嬉しかったですよね?」
「ひっ…」
ゆうきゅんの声が耳元でダイレクトに響く。
「ちょっと顔が緩んだのわかりましたよ。」
「そ、そんなことないよ。ちょっと離れて。」
私の抗議を無視してさらに近づいてくる。おでこを私のおでこにくっつけた。
「ねぇ。顔赤いですよ。すっごくドキドキしてる。」
私は思い切りゆうきゅんを押した。少し離れた距離に安心できる。
「近すぎるよ。こんなの誰でもドキドキするって。」
「うそ。俺の事好きなんでしょ。認めてよ。」
ゆうきゅんがまた近づいてきて至近距離で私の両手を握る。何でこんなことするんだろう。彼女がいるのに。私の事は関係ないでしょ。ほっといてよ。昨日邪魔したのを怒っているのだろうか。
「す...き、だよ!」
しどろもどろで答える。
「え?」
ゆうきゅんがちょっと嬉しそうな顔をした。何。どういう表情?
「文月くんはかわいくて、仕事がんばっててすごく好きだよ。大切な後輩で、大切な友達なんだから。」
ゆうきゅんの顔から表情が消えた。
「それだけ?」
「それだけって何?」
「結局辻先輩ってこと?俺とは友達としてってだけ?」
「そう。それだけ。」
唇を噛みしめて言葉を出す。今はつらいけどこれでいいはず。
「そんなはずない。じゃあ、あの顔は何?」
両肩を掴まれた。
「いたっ」
強くつかまれ思わず声が出た。もう邪魔しないし、私の事はほっといてくれればいいのに。何でそんなに聞いてくるの。そんなに私に好かれるのが嫌?
「詩織とキスしてたの見てすごく傷ついてた。ずっと俺のこと切なそうに見てたでしょ。」
「詩織」「キス」というフレーズに胸が痛むけど無視した。
「それは邪魔したのが申しかけなかったから。最近文月くんが冷たくて寂しかったから。」
ゆうきゅんは下を向いてだまっている。表情が見えない。
「でも!大丈夫!私は泰晴と付き合ってるんだからもう文月くんとは仲良くしない。」
はっきりそう言った。心配しなくてももうゆうきゅんの事は気にしない。力のなくなった肩に置かれたゆうきゅんの手を外して中に入った。ドアを閉める瞬間ゆうきゅんを少し見たけど下を見たまま全く動かなかった。
ゆうきゅんがわざわざ私のデスクまで来た。平常心。平常心。
「この資料作っていただいたもの5ページ目が全部抜けてるんですが…」
「え?」
嘘...ちょっと前にすっごく大量に作ったやつじゃん。血の気が引いた。
「あっちに資料あるので来て確認してもらえますか。」
「は、はい…わかりました。」
ゆうきゅんの後ろをついて行く。どこに資料があるんだろうかと思っていたら、例の秘密の場所に出た。
びゅっと冷たい木枯らしが吹いて目を閉じた。
ガチャという扉が閉まる音に目を開けるとすぐ前にゆうきゅんの顔が。驚いて目を見開く。扉を背に両腕で囲われていた。いわゆる壁ドン状態。
「えっ...と…資料は」
「そんなの嘘ですよ。」
「ああ。嘘…」
よかった。私のミスじゃなかったんだ。ほっとしたのも束の間。ゆうきゅんが顔を耳元に近づけた。
「先輩、さっき僕が話しかけて嬉しかったですよね?」
「ひっ…」
ゆうきゅんの声が耳元でダイレクトに響く。
「ちょっと顔が緩んだのわかりましたよ。」
「そ、そんなことないよ。ちょっと離れて。」
私の抗議を無視してさらに近づいてくる。おでこを私のおでこにくっつけた。
「ねぇ。顔赤いですよ。すっごくドキドキしてる。」
私は思い切りゆうきゅんを押した。少し離れた距離に安心できる。
「近すぎるよ。こんなの誰でもドキドキするって。」
「うそ。俺の事好きなんでしょ。認めてよ。」
ゆうきゅんがまた近づいてきて至近距離で私の両手を握る。何でこんなことするんだろう。彼女がいるのに。私の事は関係ないでしょ。ほっといてよ。昨日邪魔したのを怒っているのだろうか。
「す...き、だよ!」
しどろもどろで答える。
「え?」
ゆうきゅんがちょっと嬉しそうな顔をした。何。どういう表情?
「文月くんはかわいくて、仕事がんばっててすごく好きだよ。大切な後輩で、大切な友達なんだから。」
ゆうきゅんの顔から表情が消えた。
「それだけ?」
「それだけって何?」
「結局辻先輩ってこと?俺とは友達としてってだけ?」
「そう。それだけ。」
唇を噛みしめて言葉を出す。今はつらいけどこれでいいはず。
「そんなはずない。じゃあ、あの顔は何?」
両肩を掴まれた。
「いたっ」
強くつかまれ思わず声が出た。もう邪魔しないし、私の事はほっといてくれればいいのに。何でそんなに聞いてくるの。そんなに私に好かれるのが嫌?
「詩織とキスしてたの見てすごく傷ついてた。ずっと俺のこと切なそうに見てたでしょ。」
「詩織」「キス」というフレーズに胸が痛むけど無視した。
「それは邪魔したのが申しかけなかったから。最近文月くんが冷たくて寂しかったから。」
ゆうきゅんは下を向いてだまっている。表情が見えない。
「でも!大丈夫!私は泰晴と付き合ってるんだからもう文月くんとは仲良くしない。」
はっきりそう言った。心配しなくてももうゆうきゅんの事は気にしない。力のなくなった肩に置かれたゆうきゅんの手を外して中に入った。ドアを閉める瞬間ゆうきゅんを少し見たけど下を見たまま全く動かなかった。