腹黒王子の初恋
エピローグ1―泰晴
 優芽と文月が付き合って約一ヶ月経った。今日は優芽と文月と莉子と俺、4人で飲み会。年が明けた1月末。新年会を兼ねての報告会だ。会社が違う莉子とはあれ以来初めて会う。それに優芽とも会社で会う以外は初めて。会社では部屋も隣だし毎日見かけるが、挨拶程度。たまにちょっと話したり。

 優芽と別れて正直すごくつらかった。文月とは仕事柄話さないわけにはいかないし。何せ4年間の片思いだ。今まで何人かと付き合ったけれど、ほとんど告白されて付き合った。こんなに好きだと思ったのは初めてだ。

「ちょっと聞いてよ!文月くんがわけわからないこと言うんだよ。」
「わけわからなくないし!優芽ちゃんが鈍感だからいけないんですよ。」
「はぁ、意味わかんない。ねえ、莉子、泰晴聞いてる?」
「「聞いてる、聞いてる」」

 莉子と俺は苦笑い。俺は小さくため息をついた。目の間でなんでいちゃいちゃしてんのをみなきゃいけないかね。俺が友達になろう、前みたいにしてくれって言ったけどさ。

 さすがに優芽も別れたばっかのころはぎくしゃくしていた。俺に気を使ってどうやって接したらいいかわからないようだった。そんな優芽に会社で会うたび痛む胸を無視して普通に挨拶した。1か月もたてばほぼ以前のように戻れた気がする。

 優芽のくるくる変わる表情を見て目を細めた。俺と付き合ってた時とは違い生き生きしている優芽にほっとする。でも、文月の前でも素を出せてるんだな。今までは俺が一番の男友達だったのにな。と思い胸がツキンと痛んだ。

 今でも優芽には友達以上の気持ちがないとわかっていても無理やり閉じ込めて俺だけのものにしたい。あのまま別れなければよかったって毎日何回か思う。でも、優芽の気持ちを無視して精神的に追い込んでつらい思いをさせるのはダメだ。

 はー。もう一度溜息をついた。俺はどこで間違えたんだろうか。4年の本気の恋はたかが1か月ではなくなってくれない。

 俺は優芽と出会った4年前のことを考えた。
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