腹黒王子の初恋
 「よしっ!会議準備終了~」

 ちょっとゆうきゅんと脳内トリップしちゃったけど、終わった。終わった。机に資料とペンとお茶を10人分っと。会議開始15分前。もうすぐ営業1課の会議が始まる。

 ドSゆうきゅんもいいよね。むふふ。

 先日、泰晴と素で話しているのをゆうきゅうんに見られてから1週間たったけど、特に変わった様子はない。話の内容聞かれてなかったかな?ただ前より視線を感じるようになっただけ。様子を見られてるのだろうか。それにしても何も言わずそっとしておいてくれるなんて、顔がかわいいだけでなくて心も天使ですか!まあ、私なんかに興味がないだけか。

 「お、優芽。準備ありがと。」
 「…っ泰晴!会社で名前呼ぶなっつー…」

 うっ。後ろにゆうきゅんが!泰晴のバカでかい体で見えなかった。

 「梢先輩!お疲れ様でーす!」

 笑顔が眩しい…。変態な妄想ばかりしてすみません。そっとしておいてくれてありがとうございます。

 「それでは。お疲れ様です。」

 無表情で会議室を後にしようしたら、私の頭をポンとなでて泰晴が口を開いた。

 「今日莉子とメシはあそこの焼き鳥だからな。」
 「……!」

 話しかけるなってば。仲いいと思われるでしょ。目で抗議するけど、泰晴は気にせず自分の席の方へ歩いて行った。ゆうきゅんにまたしてもじっと見られている気がするけど、怖くて見れない。関わらないのが一番だよね。そそくさ会議室を出た。

 泰晴のやつめ。いつも会社で話しかけるな。名前呼びするなと言っているのに。一向に改めない。

 私だってこの人見知りがなかったらどんなに良かったかと思うよ。仕事でも支障があるし。でも無理なんだよね。人と目を合わせるのも怖いし、うまく話せない。無理するとすっごくストレス。私はこのままでいいんだ。だから、絶対に会社で目立ちたくない。ただでさえ泰晴と同期ってだけで目立ちやすいのに。

 デスクに戻り作業を続ける。頼まれた資料作成だ。去年のデータと今年のデータを比較するためにグラフを作成。これを今日中にとのこと。莉子と泰晴との約束は夜7時。それまでには余裕で間に合いそうだ。
 
 
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