腹黒王子の初恋
入社して2週間後、俺たちは会社の保養所で2泊3日の新人研修を受けていた。昼間はビジネスマナーやパソコン、会社の概要や、業績、現在の文具業界の状況などこの会社で働くためのあらゆる知識を詰め込まれた。社長や、副社長やいろいろな部署の部長など上の人が来て話などをしてくれた。
そして夜にはそんな上の人たちや先輩たちとの歓迎会。早く会社慣れるようにと上の人たちが気さくに話しかけてくれた。俺たちを歓迎して期待してくれているのがすごくわかった。2人しか新入社員がいないのに、これほどまで俺たちに手をかけてくれるなんて。この会社に就職できてよかったと心から思った。
ふと隣にいる梢さんを見た。いつもの無表情だがたまに少しだけやわらかい表情が見える。今日はそれなりに頑張って話してるみたいだな。お酒もよくつがれてるし。
この2泊3日の研修で彼女のことがなんとなくわかった。彼女はコミュニケーション力は皆無だがすごく頑張り屋さんだ。研修中には真剣な顔でメモを取りながらじっと前を見ている。それに能力が高い。何をしても俺より彼女の方が早く正確だった。
梢さんは自分から話しかけることはないけれど、俺が話しかければポツポツと言葉少なく話してくれた。嫌われてはいないようだけどもう少し気楽にしてくれないかなあと思ってビールを飲み干した。
そんな彼女のことをぼーっと考えていたら視線を感じて横を見た。一瞬梢さんと目が合ったがすぐ目を逸らされた。今思うとたまにじっと見られていることがある。その視線に気づいて見てもすぐ目を逸らされていた。
「梢さん、かんぱい!研修お疲れ様。」
「あ…はい。おつかれさまです。」
相変わらず目は合わないけど、カチンとグラスを合わせてくれた。
「部長、どうぞ!」
前で空になっている部長のグラスを見つけてお酌をした。
「おお、ありがとう。辻くん。気が利くなあ。」
ガハハと声を上げる部長たちを見て目を細めた。こんな飲み会もなつかしい。
つい最近まで大学でバレーボール部のみんなとよく集まってたっけ。中学生から続けていたバレーボール。大学でも割と真剣に活動していた。運動部は上下関係が厳しいところが多い。そこでの生活が目上の人との付き合い方や距離感を学ぶことができたように思う。
また開いたグラスを目にし、隣の梢さんに耳打ちした。
「ほら、空だよ。」
「え?あ、ああ...」
梢さんにそっとビール瓶を渡す。
ははっ。こういうの慣れてないんだなあと生暖かい目で彼女を見た。
「あの…」
「おお、梢くん、ありがとう。女の子についでもらったらよりおいしいなあ。がはは。」
「はあ…う、うれしいです。」
ふっ。軽くセクハラまがいのことを言われているが、変な返しをしている。俺はまた笑った。
彼女なりにがんばっているようだ。なんだか手のかかる同期を持ったようだ。
そして夜にはそんな上の人たちや先輩たちとの歓迎会。早く会社慣れるようにと上の人たちが気さくに話しかけてくれた。俺たちを歓迎して期待してくれているのがすごくわかった。2人しか新入社員がいないのに、これほどまで俺たちに手をかけてくれるなんて。この会社に就職できてよかったと心から思った。
ふと隣にいる梢さんを見た。いつもの無表情だがたまに少しだけやわらかい表情が見える。今日はそれなりに頑張って話してるみたいだな。お酒もよくつがれてるし。
この2泊3日の研修で彼女のことがなんとなくわかった。彼女はコミュニケーション力は皆無だがすごく頑張り屋さんだ。研修中には真剣な顔でメモを取りながらじっと前を見ている。それに能力が高い。何をしても俺より彼女の方が早く正確だった。
梢さんは自分から話しかけることはないけれど、俺が話しかければポツポツと言葉少なく話してくれた。嫌われてはいないようだけどもう少し気楽にしてくれないかなあと思ってビールを飲み干した。
そんな彼女のことをぼーっと考えていたら視線を感じて横を見た。一瞬梢さんと目が合ったがすぐ目を逸らされた。今思うとたまにじっと見られていることがある。その視線に気づいて見てもすぐ目を逸らされていた。
「梢さん、かんぱい!研修お疲れ様。」
「あ…はい。おつかれさまです。」
相変わらず目は合わないけど、カチンとグラスを合わせてくれた。
「部長、どうぞ!」
前で空になっている部長のグラスを見つけてお酌をした。
「おお、ありがとう。辻くん。気が利くなあ。」
ガハハと声を上げる部長たちを見て目を細めた。こんな飲み会もなつかしい。
つい最近まで大学でバレーボール部のみんなとよく集まってたっけ。中学生から続けていたバレーボール。大学でも割と真剣に活動していた。運動部は上下関係が厳しいところが多い。そこでの生活が目上の人との付き合い方や距離感を学ぶことができたように思う。
また開いたグラスを目にし、隣の梢さんに耳打ちした。
「ほら、空だよ。」
「え?あ、ああ...」
梢さんにそっとビール瓶を渡す。
ははっ。こういうの慣れてないんだなあと生暖かい目で彼女を見た。
「あの…」
「おお、梢くん、ありがとう。女の子についでもらったらよりおいしいなあ。がはは。」
「はあ…う、うれしいです。」
ふっ。軽くセクハラまがいのことを言われているが、変な返しをしている。俺はまた笑った。
彼女なりにがんばっているようだ。なんだか手のかかる同期を持ったようだ。