腹黒王子の初恋
プルルルル。
携帯が震えた。
「もしもし」
『あ、先輩やっと出た!』
「うん、ごめんな。さっき飲み会終わったんだ。」
『えー?何で出てくれないんですか。』
「会社のお偉いさんたちもいるから出られないよ。」
『女の人とか呼んでるんじゃないですか。』
「会社の研修でそんなの呼ばないって。」
不満そうな彼女に内心ウンザリしながらなだめる。
お。先客がいる。
薄暗い東屋に人がいるのが見えた。近づくにつれてそれが梢さんだと気づいた。同じ様に電話をしていた。電話の邪魔になるかと思いその場を離れようとしたが想像以上のテンションで話す梢さんの声が聞こえて足を止めた。
「莉子!莉子!ヤバい。ヤバい。妄想がとまらないよー!」
は?誰?梢さんであってるよな。
『ちょっと先輩、聞いてますか?』
電話で彼女が話しているのが聞こえたが、俺は驚いて後ろを振り向いた。
「あーたまんない。優しくてかっこよくて背が高い会社同期たまんない!」
「うん!うん!たいくん、完璧!」
は?たいくん?会社同期?俺の事か?
「研修中もたいくんのこと妄想してヤバい。集中できない。」
「どんなの?ぐふふ。知りたい?え?知りたいでしょ。」
「やっぱり一緒に旅行来てんだから男湯と女湯間違えるよね!たいくんがいる男湯に間違えて入って、それでそれでお風呂で鉢合わせしちゃうの!焦って出てこうとしたら滑って転びそうになるんだけど、たいくんが支えてくれる!でも裸同志だった~。あう。触れ合う素肌。見つめあう熱い視線!高まる鼓動…」
何かよくわからんけど熱く語ってるな。本当にあの梢さんか?どうも疑わしくて顔を覗いた。
「ああ!鉄板!あるある~~...っ…ひっ!」
「あ!梢さんだな。」
俺がまじまじと顔を見つめると
「あぅ...!ぅ...っ」
梢さんは声にならないうめき声をあげて急に無表情になった。
『おい?優芽どうした?おーい!変態優芽?エロ優芽?』
携帯から女性の声が聞こえる。
「ぶっ!ぅわはははははっ!面白すぎる!何?あの無表情でエロいこと妄想してるってこと?あはははは!変態?エロ?わははっ」
「……」
梢さんは呆然と俺を見つめていた。
「ぶっ!変態優芽っ…はははっひーっ!おかしすぎる」
「ねぇ、ちょっと笑いすぎじゃない?」
「あっ!ごめん。」
しまった。笑いすぎた。体育会系のノリすぎた。ずっと俺の友達はバレーボール繋がりの軽くふざけあうフランクな関係の気楽な奴らばかりだった。面白すぎて思わず...
「ホントごめん...失礼だったよな。ごめん」
顔の前で手を合わせて謝る。そっと梢さんを見ると、うつむいて肩を震わせていた。
ひっ!やば!泣かせちゃった。どしーよ。焦っていたけど、
「ぷっ。変態って…よくそんなこと言えるね。あははは!全然仲良くないのに!ひどっ!」
「......」
笑ってる。あの梢さんが。声出して笑ってる。呆然として見つめてしまった。何がそんなにツボだったのか。
「なぁ。猫被ってたのか?そんな変態なのに?」
「被ってない。変態って言うな。すっごく人見知りなの!」
急に普通に話してくれるのが嬉しい。にやにやしてしまう。
「俺のこと、たいくんとか言って妄想してんだろ?」
「うっ…聞いてたの?」
おお。真っ赤。ヤバい!かわいい。無表情とのギャップがありすぎる!
「ごめん。もうしない。」
「別にいいよ。気にしない。」
「うわっ。さすがイケメンは言うこと違う」
「そんなんじゃねーよ」
そんなんじゃないけど梢さんになら何故か妄想されても気分悪くない。
「でも、たいくんはやめて。恥ずかしいだろ。」
「ごめん。辻くん」
「泰晴でいいよ。仲のいい友達はみんなそう呼ぶから、俺も優芽って呼ぶ。」
「…ともだち…」
優芽が小さくつぶやいた。
「ああ。明日からまた無表情に戻るなよ?二人しかない同期だし仲良くしようぜ。な?変態優芽?」
「また言った。」
ふざけて言うと優芽が口をとがらせた。ホントこんなに表情変わるヤツだったんだな。自然と顔が緩む。
「ありがとう。」
「え?」
「気持ち悪い事妄想してて引かれて嫌われると思ったのに。思い切り笑ってくれてありがとう。」
「おう?別に気持ち悪くないよ。」
「うん。ありがとう。泰晴が同期でよかった。」
「おっ?おー」
笑顔で微笑まれどきっとした。名前を呼ばれて居心地が悪くなった。動揺に気づかれないように言葉を選ぶ。
「そ、それじゃあそろそろ帰るか。」
「そうだね。」
携帯が震えた。
「もしもし」
『あ、先輩やっと出た!』
「うん、ごめんな。さっき飲み会終わったんだ。」
『えー?何で出てくれないんですか。』
「会社のお偉いさんたちもいるから出られないよ。」
『女の人とか呼んでるんじゃないですか。』
「会社の研修でそんなの呼ばないって。」
不満そうな彼女に内心ウンザリしながらなだめる。
お。先客がいる。
薄暗い東屋に人がいるのが見えた。近づくにつれてそれが梢さんだと気づいた。同じ様に電話をしていた。電話の邪魔になるかと思いその場を離れようとしたが想像以上のテンションで話す梢さんの声が聞こえて足を止めた。
「莉子!莉子!ヤバい。ヤバい。妄想がとまらないよー!」
は?誰?梢さんであってるよな。
『ちょっと先輩、聞いてますか?』
電話で彼女が話しているのが聞こえたが、俺は驚いて後ろを振り向いた。
「あーたまんない。優しくてかっこよくて背が高い会社同期たまんない!」
「うん!うん!たいくん、完璧!」
は?たいくん?会社同期?俺の事か?
「研修中もたいくんのこと妄想してヤバい。集中できない。」
「どんなの?ぐふふ。知りたい?え?知りたいでしょ。」
「やっぱり一緒に旅行来てんだから男湯と女湯間違えるよね!たいくんがいる男湯に間違えて入って、それでそれでお風呂で鉢合わせしちゃうの!焦って出てこうとしたら滑って転びそうになるんだけど、たいくんが支えてくれる!でも裸同志だった~。あう。触れ合う素肌。見つめあう熱い視線!高まる鼓動…」
何かよくわからんけど熱く語ってるな。本当にあの梢さんか?どうも疑わしくて顔を覗いた。
「ああ!鉄板!あるある~~...っ…ひっ!」
「あ!梢さんだな。」
俺がまじまじと顔を見つめると
「あぅ...!ぅ...っ」
梢さんは声にならないうめき声をあげて急に無表情になった。
『おい?優芽どうした?おーい!変態優芽?エロ優芽?』
携帯から女性の声が聞こえる。
「ぶっ!ぅわはははははっ!面白すぎる!何?あの無表情でエロいこと妄想してるってこと?あはははは!変態?エロ?わははっ」
「……」
梢さんは呆然と俺を見つめていた。
「ぶっ!変態優芽っ…はははっひーっ!おかしすぎる」
「ねぇ、ちょっと笑いすぎじゃない?」
「あっ!ごめん。」
しまった。笑いすぎた。体育会系のノリすぎた。ずっと俺の友達はバレーボール繋がりの軽くふざけあうフランクな関係の気楽な奴らばかりだった。面白すぎて思わず...
「ホントごめん...失礼だったよな。ごめん」
顔の前で手を合わせて謝る。そっと梢さんを見ると、うつむいて肩を震わせていた。
ひっ!やば!泣かせちゃった。どしーよ。焦っていたけど、
「ぷっ。変態って…よくそんなこと言えるね。あははは!全然仲良くないのに!ひどっ!」
「......」
笑ってる。あの梢さんが。声出して笑ってる。呆然として見つめてしまった。何がそんなにツボだったのか。
「なぁ。猫被ってたのか?そんな変態なのに?」
「被ってない。変態って言うな。すっごく人見知りなの!」
急に普通に話してくれるのが嬉しい。にやにやしてしまう。
「俺のこと、たいくんとか言って妄想してんだろ?」
「うっ…聞いてたの?」
おお。真っ赤。ヤバい!かわいい。無表情とのギャップがありすぎる!
「ごめん。もうしない。」
「別にいいよ。気にしない。」
「うわっ。さすがイケメンは言うこと違う」
「そんなんじゃねーよ」
そんなんじゃないけど梢さんになら何故か妄想されても気分悪くない。
「でも、たいくんはやめて。恥ずかしいだろ。」
「ごめん。辻くん」
「泰晴でいいよ。仲のいい友達はみんなそう呼ぶから、俺も優芽って呼ぶ。」
「…ともだち…」
優芽が小さくつぶやいた。
「ああ。明日からまた無表情に戻るなよ?二人しかない同期だし仲良くしようぜ。な?変態優芽?」
「また言った。」
ふざけて言うと優芽が口をとがらせた。ホントこんなに表情変わるヤツだったんだな。自然と顔が緩む。
「ありがとう。」
「え?」
「気持ち悪い事妄想してて引かれて嫌われると思ったのに。思い切り笑ってくれてありがとう。」
「おう?別に気持ち悪くないよ。」
「うん。ありがとう。泰晴が同期でよかった。」
「おっ?おー」
笑顔で微笑まれどきっとした。名前を呼ばれて居心地が悪くなった。動揺に気づかれないように言葉を選ぶ。
「そ、それじゃあそろそろ帰るか。」
「そうだね。」