腹黒王子の初恋
「それじゃ、おやすみ。」
「おお。おやすみ。」

 笑顔で手を振る優芽に平静を装って手を振る。

 自分の部屋に入るドアを閉めて、胸を押さえる。

 何だこれ。さっきからそわそわする。

 あ。携帯。途中から通話状態のままだった。ヤバ。急に思い出した。急いで画面を見ると切れていた。そりゃそうか。ずいぶん経ったもんな。他の通話履歴とメッセージを確認する。彼女からの連絡は一切なかった。あぁあ、完全に怒ってるだろうな。まあいいや。もう明日で。

 窓から月を見た。やけにきれいな月を見つめて先ほどの優芽の顔を思い出し、一人笑うのだった。

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