腹黒王子の初恋
エピローグ2ー祐宇
総務の前を通った時、気に障る声が聞こえた。デレデレした嫌な声。声の主を探すと鼻の下を伸ばして優芽ちゃんのデスクのそばにいた。
ちっ。誰だよ。アイツ。思わず舌打ちが出る。
「さすが梢さん、仕事が早いね。ありがとう。」
「わざわざすみません。もう少ししたらそちらに伺おうと思ってたんですが。」
優芽ちゃんは微かにぎこちなく微笑んで言った。
「いーの、いーの。ちょっと手が空いたから。」
「これ、依頼された資料です。」
分厚い紙の束を渡す。
うちの会社は円滑な業務のために大量の印刷は総務が請け負っている。会議の資料などに使われる。印刷物をホチキス止めしたりマーカーでチェックしたりといろいろな要望を聞いて資料作成をしてくれる。そんな印刷業務を行っているのが今目の前で口説かれている俺の可愛い彼女。
「ありがとう。あっ、ごめん。」
例のクソ男がわざわざ優芽ちゃんの手をわざと触って資料を受け取った。みえすいたこすい手にこめかみがピクリと動いた。
「いいえ。」
優芽ちゃんは一瞬びくっとして目線を下げてまたかすかに微笑んだ。
ああ。クソ。何だアイツ。こすい手使いやがって。俺も昔同じことしてたよ!イライラして様子を伺う。
「今日もしよかったら一緒にラン...」
「あぁ、優芽ちゃん、僕が依頼していた資料できてますか?」
いきなり登場した俺に、優芽ちゃんは一切の感情をなくして見つめてきた。あ。コレ怒ってる。少し苦笑して続ける。
「あ、すみません。先客さんがいらっしゃいましたね。営業1課の文月祐宇です。よろしくお願いします。」
余所行き用の笑顔を張り付けて微笑んだ。
「おお。有名なイケメン王子文月か。俺は生産管理課の高木だ。こちらこそよろしくな。」
ふん。知らねーよ。早くどっか行け。
「名前優芽って言うの?かわいいね。」
「はぁ…」
何ふざけたこと言ってんだよ。早く帰れっての。
「ねぇ、優芽ちゃん、そいやあ今日のランチ何食べる?」
「……」
「あそこの和食はどう?優芽ちゃん和食好きじゃん?」
「……」
無言でにらみつけてくる彼女を無視して敢えてタメ口で話してやった。
「え?や、約束あるんだね。それじゃあ、また。」
クソ男がやっと帰っていた。ふん、早く帰れっての。
「ちょっと、文月くん!どういうつもり?」
「え?何がですか?」
小声で抗議してくる優芽ちゃんに知らないふりをする。
「印刷物頼まれてないし、お昼の約束もしてないでしょ?」
「そうでしたっけ?あれ?おかしいな。」
「っていうか、名前呼びしないでよ。」
「え?僕、名前呼びしてました?気づいてなかった。」
かわいい困り顔で優芽ちゃんを見つめる。
「もうやめてよ。気を付けてよね。」
「はーい。ごめんね。」
「それじゃ...」
席に戻ろうとする優芽ちゃんの服を引っ張って慌てて口を開いた。
「あのさ、最近ちょっと笑いすぎじゃない?眼鏡も外してるし。」
「え?」
「いや、優芽ちゃん無理してないかなーって思って。」
「ふふっ。心配してくれるの?無理してるよ。無理しないと!文月くんがせっかくアドバイスしてくれたんだし。」
うっ。確かに俺が言ったけどさ。ちょっと微笑むだけでいいって言ったけどさ。ああ。はにかむように笑う優芽ちゃん可愛すぎる。このまま抱き締めてやわらかい唇に触れたい。ああ、もう。この笑顔を他の男も見てると思うと嫉妬で狂いそうになる。
「じゃ、せめて眼鏡した方がいいよ。眼鏡似合うし。それであまり無理せず笑わな…」
「似合うって何。そんなの仕事に関係ないし。最近少しずつだけどみんなと話せるようになった気がする...」
「……」
はあ。ため息が出る。こんなに嬉しそうに言われたらこれ以上言えないじゃないか。
「ちょっと話過ぎた!ダメダメ。早く仕事行って。絶対名前呼びやめてよ。必要以上に話しかけないでね。」
「それは約束できませんねぇ。優芽ちゃん!」
「え?」
俺は拗ねたように名前をわざと大きく呼んでその場を去った。
ちっ。誰だよ。アイツ。思わず舌打ちが出る。
「さすが梢さん、仕事が早いね。ありがとう。」
「わざわざすみません。もう少ししたらそちらに伺おうと思ってたんですが。」
優芽ちゃんは微かにぎこちなく微笑んで言った。
「いーの、いーの。ちょっと手が空いたから。」
「これ、依頼された資料です。」
分厚い紙の束を渡す。
うちの会社は円滑な業務のために大量の印刷は総務が請け負っている。会議の資料などに使われる。印刷物をホチキス止めしたりマーカーでチェックしたりといろいろな要望を聞いて資料作成をしてくれる。そんな印刷業務を行っているのが今目の前で口説かれている俺の可愛い彼女。
「ありがとう。あっ、ごめん。」
例のクソ男がわざわざ優芽ちゃんの手をわざと触って資料を受け取った。みえすいたこすい手にこめかみがピクリと動いた。
「いいえ。」
優芽ちゃんは一瞬びくっとして目線を下げてまたかすかに微笑んだ。
ああ。クソ。何だアイツ。こすい手使いやがって。俺も昔同じことしてたよ!イライラして様子を伺う。
「今日もしよかったら一緒にラン...」
「あぁ、優芽ちゃん、僕が依頼していた資料できてますか?」
いきなり登場した俺に、優芽ちゃんは一切の感情をなくして見つめてきた。あ。コレ怒ってる。少し苦笑して続ける。
「あ、すみません。先客さんがいらっしゃいましたね。営業1課の文月祐宇です。よろしくお願いします。」
余所行き用の笑顔を張り付けて微笑んだ。
「おお。有名なイケメン王子文月か。俺は生産管理課の高木だ。こちらこそよろしくな。」
ふん。知らねーよ。早くどっか行け。
「名前優芽って言うの?かわいいね。」
「はぁ…」
何ふざけたこと言ってんだよ。早く帰れっての。
「ねぇ、優芽ちゃん、そいやあ今日のランチ何食べる?」
「……」
「あそこの和食はどう?優芽ちゃん和食好きじゃん?」
「……」
無言でにらみつけてくる彼女を無視して敢えてタメ口で話してやった。
「え?や、約束あるんだね。それじゃあ、また。」
クソ男がやっと帰っていた。ふん、早く帰れっての。
「ちょっと、文月くん!どういうつもり?」
「え?何がですか?」
小声で抗議してくる優芽ちゃんに知らないふりをする。
「印刷物頼まれてないし、お昼の約束もしてないでしょ?」
「そうでしたっけ?あれ?おかしいな。」
「っていうか、名前呼びしないでよ。」
「え?僕、名前呼びしてました?気づいてなかった。」
かわいい困り顔で優芽ちゃんを見つめる。
「もうやめてよ。気を付けてよね。」
「はーい。ごめんね。」
「それじゃ...」
席に戻ろうとする優芽ちゃんの服を引っ張って慌てて口を開いた。
「あのさ、最近ちょっと笑いすぎじゃない?眼鏡も外してるし。」
「え?」
「いや、優芽ちゃん無理してないかなーって思って。」
「ふふっ。心配してくれるの?無理してるよ。無理しないと!文月くんがせっかくアドバイスしてくれたんだし。」
うっ。確かに俺が言ったけどさ。ちょっと微笑むだけでいいって言ったけどさ。ああ。はにかむように笑う優芽ちゃん可愛すぎる。このまま抱き締めてやわらかい唇に触れたい。ああ、もう。この笑顔を他の男も見てると思うと嫉妬で狂いそうになる。
「じゃ、せめて眼鏡した方がいいよ。眼鏡似合うし。それであまり無理せず笑わな…」
「似合うって何。そんなの仕事に関係ないし。最近少しずつだけどみんなと話せるようになった気がする...」
「……」
はあ。ため息が出る。こんなに嬉しそうに言われたらこれ以上言えないじゃないか。
「ちょっと話過ぎた!ダメダメ。早く仕事行って。絶対名前呼びやめてよ。必要以上に話しかけないでね。」
「それは約束できませんねぇ。優芽ちゃん!」
「え?」
俺は拗ねたように名前をわざと大きく呼んでその場を去った。