腹黒王子の初恋
 最近の優芽ちゃんは変わった。努力をしている。見た目も行動も。まず、眼鏡を外した。もともと目はいいから裸眼で見える。正直眼鏡がない方が楽らしい。それから髪型、化粧、服装も以前とは違い少し華やかになった。とはいっても以前が地味で暗すぎたから人並になった程度だけど。行動はと言うと、俺のアドバイス通り微笑むようになった。自分から必要以上に話すことはしないけど、聞かれたことに目を見ながら微笑んで相槌をうつ。とはいえ、まだ全然慣れていないから、すぐ目を逸らしたり、笑顔がぎこちない。逆にそれが男心をくすぐっているようだ。

 自分の席に戻ると先輩たちが何やら話しているのを聞いた。

「なあ、鉄女見た?最近変わったよな。」
「俺も思った。てか、意外にかわいいよな。」
「そうそう。今まで気づかなかったわ。」
「恥ずかしそうに微笑むのがたまらんな。」
「分かる~!なあなあ、今度飲み誘ってみない?」
「来るか~?おい、泰晴、お前誘ってみ…」

 バン!!

 思い切りファイルをで机を叩いた。

「あっ。落としちゃった。大きい音出してすみません。」
「おぉ。」

 ここでもかよ。ホントに勘弁してよ。優芽ちゃんがかわいいのは前から知ってたっつうの。今更遅いんだよ。今だイライラが治まらならずぶつぶつ言っていると、隣から笑い声が聞こえた。

「くっくっく...お疲れ様。」

 俺は他の人に見られないように隣の辻先輩を睨んだ。
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