ずっとやさしい手のひら・続編
勇気を振り絞り、ボタンを押すと

「はい」

新くんの声が聞こえた

「亜…美です」

受話器を置いた音だけ聞こえ、応答の声が聞こえてこなかった

出て来てくれるのかも分からないまま、ただ呆然として立ちすくむ

ガチャッ

ドアが開き、新くんが顔を出した

「あ、あの…話があって…」

「上がれば」

冷たい視線で一度だけ私を見て、すぐに目を逸らし部屋へ入ってしまった

会いたくなかったんだよね…

懐かしい部屋の匂いに裏切ってしまったことに胸が張り裂けそうになる

込み上げてくる痛みに耐え、私は泣くのを我慢していた

部屋の入口で立ったままでいた私に

「座れば」

新くんは私の顔を見ずに言った

怒っているのは当り前

冷たくされるのも当り前

こうさせてしまったのは私

自分でも分かっていること



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