ずっとやさしい手のひら・続編
「お座り下さい」

この先生はあの時の…

年月が経っているせいか頭に白髪が交じってしまっている

でも雰囲気は変わらずあの時のまま…

「久しぶりですね」

「は、はい」

カルテを捲りながら私の方を向き、にこっと微笑み

「おめでとう。妊娠2ヶ月ですよ」

言われた瞬間胸が熱くなり嬉しさが込み上げ、たくさんの涙が溢れていた

「本当ですか?」

座っていた健太が体を前に出し、先生に聞いた

「本当ですよ。奥さんのお腹には命が宿っています」

「ありがとうございます。亜美、赤ちゃんいるんだぞ」

目尻を下げ、喜びのあまり先生がいることを忘れ、私に抱きついた

「健太、健太」

「あ、ごめん」

我に戻った健太は恥ずかしそうに顔を赤くし私に微笑む

妊娠が本当でよかった

こんなに健太が喜んでくれている

健太の笑顔が何よりも嬉しく、私はお腹に手をやり優しく撫でた

大事にしたい

私と健太の赤ちゃん

この小さな命を大事にしたい

私は両手でお腹を包み込み、そっと優しく何度も擦っていた



< 37 / 50 >

この作品をシェア

pagetop