ずっとやさしい手のひら・続編
「川崎さん、分娩室に入りますよ」

私は重たい腰をやっとの思いで上げ、隣の分娩室へと移動する

この時点ですでに悲鳴をあげたいぐらい痛さは絶頂に達していた

健太は私の腰に手を回し、私に合わせてゆっくり歩いてくれている

「大丈夫か?」

「う…ん。でも辛い…」

「もう少しだから」

「う…ん」

あと少し

あともうちょっとで赤ちゃんに会える

それが唯一頑張れること

「俺も立ち合うから」

「え?」



そんなこと今まで何も言わなかったのに…

それに私も言おうともしなかった

てっきり廊下で待っているものだと思っていたのに…

「亜美一人は心配だから」

そんな健太の優しいさに自然と涙が流れていた

「俺らの子供だから一緒に頑張ろう」

「うん」

私はすぐに分娩台に上がり、いよいよ人生初の出産と立ち向かうことになった




< 44 / 50 >

この作品をシェア

pagetop