琥珀の中の一等星
「イエスさまはマリアとヨセフのもとに、お生まれになりました。ユダヤという国の、ベツレヘムのことです。イエスさまが生まれるその前、ふしぎな星が空にあらわれたのです。星をしらべていた学者さまたちは、その星を見て、旅に出ました」
ライラの読んだ聖書は、神様の誕生を描いたクリスマスの話だった。あと二ヵ月もすれば、街はクリスマスの様相をかもすようになる時期。ぴったりだ。
クリスマスの前にこの話で、クリスマスという日を祝う意味を知る。そして、クリスマスまでの二ヵ月近くでもっと詳しく、本や大人の話から神様のことを知っていってほしい。
神様のことだけではない。
本から知識を得ること。文字を読む楽しみ。そしてライラのように、音読することにも興味を覚える子も、あるいはいるかもしれない。
単純に今、思いつける以上の、たくさんのことを子どもたちに伝えられたなら。
静かに腰掛けている子どもたちの前で、ライラは本を開いてゆっくり読んでいった。
聞き取りやすいように、穏やかではあるけれどはっきりとした声で。
ときには調子をつけて、うたうように。
事前に何度も練習していたので、思ったよりも困ることはなかった。もちろんとても緊張はしていたし、そのために心臓は終始どきどきとしていたけれど。それでもこの朗読を「楽しい」と心から思えていた。
普段、合唱隊で歌を歌うのとは違う楽しさがある。合唱隊での合唱曲は、『皆と合わせること』や『しっかり声をおなかから出して発声すること』などが求められる。
この朗読は、ある意味それとは真逆といえた。
自分の好きなように読むことができる。誰に合わせる必要もなく。
声はしっかり出すことが必要。でも張り上げるわけではない。あくまでも聞き取れるように。それ以上に必要なのは、優しく読むこと。
これは、普段、詩をくちずさんでいるのときっと似ている、とうたうように読みながらライラは思った。
そして実際に体験したことで知る。リゲルがライラをこの役目に推薦してくれた理由を。
リゲルは覚えてくれていたのだろう。ライラが昔、詩をうたったことを。
そしてきっと。
……それを魅力的なことだと記憶していてくれた。
読み進めるうちにそれが胸に染み入ってきて、ライラの心を明るく、熱くさせた。
そういうことを教えてくれたリゲル。今、うしろのほうで聞いてくれているのだろう。
彼の耳に届けたい。読む声を、うたう声を。心地良く感じてくれたら、どんなにか嬉しいだろう。
そしてその望みはライラに勇気もくれた。
自分の持つ特技。リゲルに認めてもらえているのだ。
自分の一部分であっても、すごいと思ってもらえているのだ。魅力的だと思ってくれているのだ。
おまけにさっき、今のドレス姿を見て「色っぽくなった」なんてまで言ってくれて。
ああ、あれは一体どういう意味で。
それを思ってしまったときばかりは、ちょっと気がそれてしまいそうになったので、慌てて絵本の内容に集中する気持ちを強めることになったけれど。
ライラの読んだ聖書は、神様の誕生を描いたクリスマスの話だった。あと二ヵ月もすれば、街はクリスマスの様相をかもすようになる時期。ぴったりだ。
クリスマスの前にこの話で、クリスマスという日を祝う意味を知る。そして、クリスマスまでの二ヵ月近くでもっと詳しく、本や大人の話から神様のことを知っていってほしい。
神様のことだけではない。
本から知識を得ること。文字を読む楽しみ。そしてライラのように、音読することにも興味を覚える子も、あるいはいるかもしれない。
単純に今、思いつける以上の、たくさんのことを子どもたちに伝えられたなら。
静かに腰掛けている子どもたちの前で、ライラは本を開いてゆっくり読んでいった。
聞き取りやすいように、穏やかではあるけれどはっきりとした声で。
ときには調子をつけて、うたうように。
事前に何度も練習していたので、思ったよりも困ることはなかった。もちろんとても緊張はしていたし、そのために心臓は終始どきどきとしていたけれど。それでもこの朗読を「楽しい」と心から思えていた。
普段、合唱隊で歌を歌うのとは違う楽しさがある。合唱隊での合唱曲は、『皆と合わせること』や『しっかり声をおなかから出して発声すること』などが求められる。
この朗読は、ある意味それとは真逆といえた。
自分の好きなように読むことができる。誰に合わせる必要もなく。
声はしっかり出すことが必要。でも張り上げるわけではない。あくまでも聞き取れるように。それ以上に必要なのは、優しく読むこと。
これは、普段、詩をくちずさんでいるのときっと似ている、とうたうように読みながらライラは思った。
そして実際に体験したことで知る。リゲルがライラをこの役目に推薦してくれた理由を。
リゲルは覚えてくれていたのだろう。ライラが昔、詩をうたったことを。
そしてきっと。
……それを魅力的なことだと記憶していてくれた。
読み進めるうちにそれが胸に染み入ってきて、ライラの心を明るく、熱くさせた。
そういうことを教えてくれたリゲル。今、うしろのほうで聞いてくれているのだろう。
彼の耳に届けたい。読む声を、うたう声を。心地良く感じてくれたら、どんなにか嬉しいだろう。
そしてその望みはライラに勇気もくれた。
自分の持つ特技。リゲルに認めてもらえているのだ。
自分の一部分であっても、すごいと思ってもらえているのだ。魅力的だと思ってくれているのだ。
おまけにさっき、今のドレス姿を見て「色っぽくなった」なんてまで言ってくれて。
ああ、あれは一体どういう意味で。
それを思ってしまったときばかりは、ちょっと気がそれてしまいそうになったので、慌てて絵本の内容に集中する気持ちを強めることになったけれど。