琥珀の中の一等星
報告、祝福、僅かな不安
数日、迷った。伝えるかどうかを。リゲルとの交際を公言するかについてだ。それは家族と友達、あるいは例の従姉妹のお姉さんにだったりする。
お姉さんには手紙を書こうと思った。この間買ったレターセットで。良い報告ができそうなのが、嬉しくてたまらずに、そして誇らしい。
「次は貴女」
「しあわせが訪れますように」
なんて言ってもらったから。
結婚なんて、きっとまだまだ先。そもそも交際だって始めて数日なのだ。考えるのだって早すぎるし、上手くいく保証なんてない。
でもその欠片は手に入れた。だからうまくやればいいのだ。
すれ違うことは必ず起こってしまうと思う。でも、乗り越えられるように頑張れば。
ゴールインだってきっと夢じゃない。お姉さんのように白いドレスを着ることも。
しかしほかのひと相手には、やっぱり数日ためらってしまったのだった。
直接言わなくてはだから。やっぱりそれは恥ずかしいから。
でも言わないわけにもいかない。特に家族には。
リゲルは幼馴染。……交際する前は、だけど。
でも元からそれがあるのは事実。そして、家にきてくれるのだってこれからもなくならないはずで。関係が変わったこと、わかってしまうだろう。察されて、問い詰められでもしたら。
そんなことになって、「どうして黙っていたの」なんてリゲルと引き離されるなんてことが起こってしまわないように、言っておかなければ。
よって、やっと、やっと勇気を出して。数日後、母と二人になったリビングで切り出した。
「そうなの。おめでとう」
しかし母はちょっと目を丸くしたものの、すぐに、ふっとめもとを緩めて祝福の言葉をくれた。飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置いて、立ち上がる。そのテーブルの対面、ソファに座っていたライラの隣へきて、座った。
「いつかそうなるとは思っていたわ」
そっと頭を撫でられる。その手つきは、リゲルとはまったく違う意味でやさしかった。ここまで育ててくれたが故の、やさしさ。その手つきと言葉はライラの心の中に染み入ってくる。
そうか、お母さんだってそんなに鈍くない。
もしかしたら自分が幼い頃からリゲルを想っていたことだって知っていたかもしれない。
いや、多分そうだったのだろう。このくちぶりからするに。
「リゲルくんはいい男ね。お仕事をはじめてから、余計にそう思うようになったわ」
言われて、くすぐったく、でもとても嬉しくなった。想っていて、結ばれることのできた、そのひとのことをそう言ってもらえれば。母がリゲルのことを好ましく思っていたのは、昔から知っていても。それでも。
「お父様に報告なさい」
でも言われたことには少しためらってしまった。
母は受け入れてくれるとは思っていた。しかし、父に関しては不安があった。
何故なら父はプライドが高い。リゲルの出自は立派なものではないから。本当の親がわからない、貰われっこを恋人にしようなど許さない、と言われる可能性だってある。
それが不安だったのだけど、「お父様だってそんなに冷たくないわ」と母が言ってくれた。その言葉が後押しになる。
「それに私と同じ、ある程度は予想していたはずよ」
お姉さんには手紙を書こうと思った。この間買ったレターセットで。良い報告ができそうなのが、嬉しくてたまらずに、そして誇らしい。
「次は貴女」
「しあわせが訪れますように」
なんて言ってもらったから。
結婚なんて、きっとまだまだ先。そもそも交際だって始めて数日なのだ。考えるのだって早すぎるし、上手くいく保証なんてない。
でもその欠片は手に入れた。だからうまくやればいいのだ。
すれ違うことは必ず起こってしまうと思う。でも、乗り越えられるように頑張れば。
ゴールインだってきっと夢じゃない。お姉さんのように白いドレスを着ることも。
しかしほかのひと相手には、やっぱり数日ためらってしまったのだった。
直接言わなくてはだから。やっぱりそれは恥ずかしいから。
でも言わないわけにもいかない。特に家族には。
リゲルは幼馴染。……交際する前は、だけど。
でも元からそれがあるのは事実。そして、家にきてくれるのだってこれからもなくならないはずで。関係が変わったこと、わかってしまうだろう。察されて、問い詰められでもしたら。
そんなことになって、「どうして黙っていたの」なんてリゲルと引き離されるなんてことが起こってしまわないように、言っておかなければ。
よって、やっと、やっと勇気を出して。数日後、母と二人になったリビングで切り出した。
「そうなの。おめでとう」
しかし母はちょっと目を丸くしたものの、すぐに、ふっとめもとを緩めて祝福の言葉をくれた。飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置いて、立ち上がる。そのテーブルの対面、ソファに座っていたライラの隣へきて、座った。
「いつかそうなるとは思っていたわ」
そっと頭を撫でられる。その手つきは、リゲルとはまったく違う意味でやさしかった。ここまで育ててくれたが故の、やさしさ。その手つきと言葉はライラの心の中に染み入ってくる。
そうか、お母さんだってそんなに鈍くない。
もしかしたら自分が幼い頃からリゲルを想っていたことだって知っていたかもしれない。
いや、多分そうだったのだろう。このくちぶりからするに。
「リゲルくんはいい男ね。お仕事をはじめてから、余計にそう思うようになったわ」
言われて、くすぐったく、でもとても嬉しくなった。想っていて、結ばれることのできた、そのひとのことをそう言ってもらえれば。母がリゲルのことを好ましく思っていたのは、昔から知っていても。それでも。
「お父様に報告なさい」
でも言われたことには少しためらってしまった。
母は受け入れてくれるとは思っていた。しかし、父に関しては不安があった。
何故なら父はプライドが高い。リゲルの出自は立派なものではないから。本当の親がわからない、貰われっこを恋人にしようなど許さない、と言われる可能性だってある。
それが不安だったのだけど、「お父様だってそんなに冷たくないわ」と母が言ってくれた。その言葉が後押しになる。
「それに私と同じ、ある程度は予想していたはずよ」